QNAPのTS-230とSynologyのDS220jは、どちらも2万円程度で購入できるエントリーモデルのNASです。
なにが違うのか、どちらがおすすめかを詳しく紹介します。
性能比較
QNAPは中小企業向けのハイスペックで拡張性の高い製品が多いのですが、QNAP TS-230は、家庭用エントリーNASの人気メーカーであるSynologyを意識して作られたかのような製品で、家庭向けにコンパクトな新しい筐体が採用されています。
TS-230とDS220jの性能を比較すると、2ベイNASで、同じCPU、1 GbE LANを1つ搭載しており、ほぼ同じ性能です。
細かい点までみると、TS-230の方がメモリが多く、低騒音でコンパクト、linuxベースのOSを採用し、ホットスワップに対応しているなど高性能と言えます。
ソフトウェアの面ではQNAPの方が難易度は上がるものの細かい設定ができるため、コンピューターやネットワークに詳しい方には TS-230が圧倒的におすすめです。
しかし、DJ220jのユーザーインターフェイスの方が初心者にも使いやすいです。
NASにはデータが保存できれぱ十分で設定や管理には時間をかけたくないという方や、これまでバッファローやアイ・オー・データのNASを使っていて不便は感じなかったという方、LinuxとかSSH, RAID, ディスク暗号化のことはよくわからないという方などほとんどの方にはDJ220jがおすすめです。
簡単に言えば、どちらを買ってもほぼ同じことができますが、ハードウェアはQNAP TS-230のほうがやや高性能で、ソフトウェアはDJ220jの方が初心者向けでやや使い勝手が良いです。
一覧表で性能を比較してみましょう。
型番 | QNAP TS-230 |
Synology DS220j |
画像 |
||
参考価格 | − | − |
CPU | Realtek RTD1296 4-core 1.4 GHz 64-bit |
Realtek RTD1296 4-core 1.4 GHz 64-bit |
メモリ | 2 GB DDR4 | 512 MB DDR4 |
フラッシュメモリ | 4 GB(デュアルブートOS保護) | – |
ベイ数 | 2 | 2 |
RJ-45 1GbE LAN ポート | 1 | 1 |
USB 3.0 ポート | 2 | 2 |
USB 2.0 ポート | 1 | – |
ホットスワップ | ◯ | – |
OS | QTS 4.4.1 (embedded Linux) | DiskStation Manager |
ノイズレベル | 15 db(A) | 18.2 dB(A) |
システムファン | 8 cm | 9.2 cm |
最大同時接続数(CIFS) | 128 | 100 |
消費電力(動作時) | 12.277 W | 12.46 W |
外形寸法 | 188.64 × 90.18 × 156.26 mm | 165 x 100 x 225.5 mm |
重量 | 2.01 kg (ACアダプタを含む。筆者による本体の実測で1.1 kg) | 0.88 kg |
詳しく比較していきましょう。
マザーボード
TS-230とDS220jのCPUは同じで、4-core 1.4 GHzのARMが採用されています。
どちらも、1 Gbpsイーサーネット1本でデータ転送をするには十分なCPU性能があります。
読み書きの速度は、TS-230では最大113 MB/s、DS220jでは最大112 MB/sで誤差の範囲で同じです。
TS-230の方は、ボリュームをAES暗号化していても最大113 MB/sが出ると書かれていますが、CPUが同じですのでDS220jでも同じくらいの速度は出るでしょう。
メモリは、TS-230は2 GBで、DS220jは512 MBです。
TS-230は、このクラスのNASとしては大きいメモリが積まれています。メモリ増設はできません。
QNAPのNASで2 GB以上のメモリを積んでいると Qsirchという高速な全文検索エンジンが使うことができ、ブラウザ拡張機能やmacのFinderなどで、NAS上のファイルを一瞬で検索することができ便利です。
また、QNAPは4GBのフラッシュメモリにOSが載っていますので、HDDがなくてもOSが動きますし、HDDがクラッシュしても再設定が容易です。
DS220jのメモリ増設はできません。とはいえ通常使用では512 MBあれば十分でしょう。
フラッシュメモリについては公開されていませんが、BIOS用に16 MBのフラッシュメモリが載っていて Web Assistantという初期設定用のツールはそこに入っていると思われます。
ベイ・外部ポート
ベイ数はどちらも2つで、RAID0, RAID1, JBOD, BASICのRAIDタイプに対応しています。
さらにDS220jには、Synology Hybrid RAIDという独自の自動化 RAID 管理システムがあり、容量の異なるHDDを刺していても、小さい容量側に制限されることなく全ての領域を使えるのが便利です。ただ独自のRAIDシステムですので、障害時の復旧方法は制限されます。
TS-230の方は、RAIDを作成したストレージプールに対して、仮想ボリュームやスナップショット領域を割り当てて使用できるので、RAIDを組んだ後については柔軟性が高いです。
ネットワークインターフェイスは、どちらもRJ-45 1GbE LAN ポートが1本です。
最近のHDDの最大内部転送レートは170~180 MB/sありますので、主にこのネットワークインターフェイスが速度のボトルネックになるかと思います。112~3 MB/sの転送速度で特に困らない場合は、これで十分でしょう。
より速い転送速度が必要な場合には、1GbE 2本のリンクアグリゲーションや、2.5GbE LAN、拡張可能なPCIeスロットに対応したハイクラスのNASを選択しましょう。
ただ、そうすると今度は他の部分がボトルネックになり、RAID10にするために4ベイが要るとか、wifi6にするために新しいルーターが要るなどと、どんどんお金がかかります。とりあえず、1GbE 1本で使ってみて、不足を感じたらNASを買い換えるくらいの考えで良いと思います。
USBポートは、TS-230が筐体前面にUSB 3.0が1つ、後ろにUSB3.0とUSB2.0が1つずつです。DS220jは後ろにUSB2.0が2つです。TS-230は前にUSBポートがあって便利ですね。
筐体
どちらもハードディスクを換装するには、ケースを開ける必要があります。
しかし、TS-230はホットスワップに対応しており、NASの電源を落とさずにハードディスクを換装することができます。DS220jはホットスワップに対応していません。
故に、TS-230のほうがダウンタイムを短縮できますが、まあ家庭用ならダウンタイムとか気にしないですよね。
システムファンのサイズはTS-230は8 cmで、DS220jは9.2 cmです。
一般的にファンは大きい方が静音化に有利とされますが、ノイズレベルはTS-230が15 db(A)で、DS220jが18.2 dB(A)と、TS-230の方が仕様上はだいぶ静かです。
DS220jのノイズレベル測定時の背景ノイズは 16.49-17.51 dB(A)ということで真面目に測る気がないようですが、それを加味してもTS-230の方が静かのようです。
リビングに置くならどちらでも構わないと思いますが、寝室に置くならDS220jだと気になる方もいらっしゃるかもしれません。それでも、DS220jのノイズが気になる場合は、ファンコントロールで低ノイズモードを選択するという手もあります。
CPUファンは付いていません。
消費電力は、TS-230が12.277 Wで、DJ220jが12.46 Wと同じです。
外形寸法は、TS-230が高さ188.64 × 幅90.18 × 奥行き156.26 mmで、DS220jが165 x 100 x 225.5 mmで、TS-230の方が奥行きが約 7 cmも小さいです。
TS-230は、ハードディスクの長辺が垂直になるように固定しますので、高さは出ますが、奥行きは短くできるということのようです。(次の画像の上側が、NASの正面です。)
DS220jは、ハードウェアの長辺が水平になるように固定します。
QNAPは、中小企業向けのハイスペックで柔軟性の高い製品が多く、従来製品ではケースを開けなくてもハードディスクを換装できるのが売りだったのですが、TS-230ではケースを開けないとハードディスクを換装できません。
その変わり、TS-230は省スペースで、低騒音になっていますし、このサイズでもプラスチックのハードディスクコンテナ付きです。DS220jはホットスワップに対応していないためハードディスクは筐体にネジで直に止めます。
重量については、TS-230は仕様では2.01 kgとなっていますが、これはACアダプタを含む重量のようで、本体のみを実測したところ1.1 kgでした。DJ220jは0.88 kgです。重量もほぼ変わりません。
おすすめはどっち?
このように、どちらもほぼ同じ性能ではありますが、メモリ容量や、筐体の省スペース性・静音性については、QNAPのTS-230の方が良いです。
一方でソフトウェアの面では、DJ220jの方が初心者向けの独自RAIDがあったり、管理画面のユーザーインターフェイスがわかりやすいなど、コンピュータに詳しくない方でも使いやすくなっています。TS-230は細かい設定もできますので、どちらかといえばマニアックな方向けです。
そのため、NASをライトに使うほとんどの方には、DS220jがおすすめです。
一方で、玄人志向のKURO-BOXというNASを使っていたという方や、Raspberry Piが好きとか、NASをlinuxサーバーとして使おうという方、サーバを見つけたらとりあえずnmapを打ち込んでというような、こだわりのある方にはTS-230がおすすめです。
とはいえ違いはわずかであり、NASとして通常の使い方をする分には、どちらでもできることは同じです。
TS-230の方が価格が安ければ、ライトユーザーの方がTS-230を選んでもよいでしょう。
1 Gbpsイーサーネットケーブルでルーター/スイッチと繋ぐ予定であれば、どちらも十分な性能がある上、価格も抑えられていますのでおすすめです。
価格は次のようになっています。
型番 | QNAP TS-230 |
Synology DS220j |
画像 |
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参考価格 | − | − |
まとめ
QNAPのTS-230とSynologyのDS220jの性能はよく似ていますが、ハードウェアの性能や筐体の省スペース性・静音性はTS-230の方が良いです。ユーザーインターフェイスについては、DS220jの方が初心者向けです。
そのため、ライトユーザーの方にはDS220jがおすすめで、コンピュータに詳しい方にはTS-230がおすすめですが、違いはわずかですので価格が安い方で選ぶのも良いでしょう。
なお、ハードディスクは、24時間365日常時稼働のNAS用に設計されているWD Redがおすすめです。
複数のバックアップのうちの一つとして割り切って使うのであれば、一般・デスクトップ用のWD Blueも手頃で良いでしょう。
シリーズ | WD Red / Red Plus | WD Blue |
画像 |
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2 TB | ¥18,980〜(2024/10/15 08:15) |
¥13,800〜(2024/10/15 20:25) |
3 TB | ¥30,000〜(2024/10/15 20:25) |
– |
4 TB | ¥26,200〜(2024/10/15 20:25) |
− |
6 TB | ¥58,880〜(2024/10/15 20:25) |
¥17,325〜(2024/10/15 03:06) |
8 TB | ¥42,000〜(2024/10/15 20:25) |
– |
12 TB | ¥89,800〜(2024/10/15 08:15) |
– |
以上、TS-230とDS220jの性能比較!でした。