USB・PC接続型のオシロスコープはノートパソコンなどに接続して手軽に使えるため、近年人気が出てきています。
通常のスタンドアロン型と比べると、いくつか特徴に違いがあります。
USB接続型の購入を検討している方のために、USB接続型の利点・欠点を紹介します。
USB接続型とスタンドアロン型
デジタルオシロスコープのタイプは、「スタンドアロン型」と「USB接続型」の二種類に分けることができます。
スタンドアロン型は、液晶モニタが搭載されているいわゆる普通のオシロで、それ単体で信号の測定から表示までを行えるオシロです。
性能も価格も幅広いですが、安価な製品には例えば、Tektronix TBS1000シリーズ (公式)や、OWONのSDS-Eシリーズ (公式)があります。
一方のUSB接続型は、信号の測定だけを行うオシロで、信号の表示はUSBなどで接続したパソコンで行います。
以前はパソコンというと起動に数分はかかったため、すぐに使えない点がUSB・PC接続型オシロスコープのネックになっていましたが、現在ではノートパソコンはスタンバイ状態から数秒で起動でき、実用的になってきました。
USB接続型オシロスコープの有名な製品にはPicoScope (公式)があります。
一般的にUSB接続型は、ディスプレイがない分コンパクトで場所を取らず、スタンドアロン型よりも安価ですが、サンプリング周波数・分解能・S/N・操作性などの性能は劣る傾向にあります。
USB接続型オシロスコープの利点と欠点を詳しく見ていきましょう。
利点
- 場所をとらない
USB接続型は端末が小さいのが嬉しいポイントです。
スタンドアロン型オシロスコープは工具箱に入らないため、片付ける棚を確保しなければなりませんし、出すのが億劫になることもあります。またスタンドアロン型は工作机の上でも場所を取ります。
回路図をノートパソコンで見ている方なら、USB接続型オシロスコープの端末を工具箱から出すだけで、ノートパソコンがオシロスコープになるので便利です。
- 持ち運びが簡単
スタンドアロン型オシロスコープは通勤カバンに入らないため、持ち歩くのは難しいですし、そもそも持ち歩くことを考慮されていません。USB接続型であれば、ノートパソコン用のカバンに、端末とプローブを入れれば持ち運び準備完了です。
- 価格が安い
ディスプレイがない分安価です。もちろんUSB接続型も、サンプリング周波数が高い製品は高価になります。
- 長時間の波形記録も可能
パソコンのストレージを使用しますので、波形を大量に保存することができます。スタンドアロン型では数枚分が保存できるかどうかというレベルで、必要な波形はその都度パソコンに転送しなければなりません。
- 波形データの保存・加工が容易
波形ははじめからパソコンの中に保存されますので、一通り測定をし終わってから、必要な波形だけを選んで、データ形式をまとめて変換するなどができます。スタンドアロン型だと、波形データの転送形式に制限があるものもあり、画像データしかパソコンに送れない機種もあります。
欠点
- GNDがパソコンと共通
USB接続型の一番の欠点は、GNDが共通な点です。GNDに誤って電圧がかかると、パソコンのUSB基盤が壊れる恐れがあります。オシロスコープで、商用電源を測定しようとして失敗するユーザーは多いですが、USB接続型で失敗すると、パソコンが壊れますので注意が必要です。
- 入力耐圧がやや低い
入力耐圧は±20V程度の製品が多いです。プローブ側で設定を10倍にすれば、±200Vまで測れることになります。デジタル回路ではこれ以上は必要にならないと思いますが、高圧を測る予定のある方は仕様を確認してください。
- 慣れないと操作がしにくい
測定条件変更をマウスカーソルで行うことになるため、スタンドアロン型で専用のつまみを回したりボタンを押すよりも、操作に時間がかかる。スタンドアロン型に慣れている方からすると、別物の測定装置に感じるかもしれません。
- 電源をUSBから取るバスパワータイプでは、グラウンドループの影響があり、GND電位が安定しない
外部電源対応の製品を選ぶようにしましょう。また、外部電源はスイッチング電源などではなく安定化されたものを用意するのが理想ですが、スタンドアロン型でも、省スペース化のため内蔵電源はスイッチング電源のものが多いです。スイッチング周波数近くで、微弱な信号を見る場合は参考程度にしましょう。
- サンプリング周波数・分解能・S/Nはスタンドアロン型の方が良い傾向にある
低速である程度信号強度のある測定向きです。ただ、安価なスタンドアロン型と比べた場合は、あまり違いはありません。
- 使用するにはパソコンが起動するのを待たないといけない
スタンドアロン型が電源を入れれば測定できるのに対して、USB接続型はパソコンと測定アプリケーションが起動するのを待つ必要があります。ただ最近のノートパソコンはスタンバイで使う方が多いので、あまり気にならないかもしれません。
おすすめの使い方
以上のように、USB接続型は手軽に使え、波形データの共有が容易な一方で、高速な信号や、微弱な信号、高電圧の信号など専門性の高い測定には向いていません。
それを考慮すると、USB接続型は次のような方におすすめです。
- 波形をブログにアップしたい方。パソコンで過去の測定波形を管理したい方。
USB接続型はパソコンで波形データを扱うのが容易です。過去の測定結果を整理しておいたり、知り合いと共有するならば、USB接続型一択でしょう。
- raspberry piの出力など3~5 Vの高周波を扱わないデジタル回路に使いたいという方。
低電圧のデジタル回路の測定も、USB接続型でよいでしょう。10 MHz対応オシロであれば、100 kHz程度の波形の立ち上がりも十分に見えます。
- 電子工作もくもく会などで外出先で使う方や、展示会などのイベントでデモ展示をしたい方。
外で使うことがあるなら、持ち運びが楽なUSB接続型が良いです。
一方、1MHz以上のアナログ電子工作の用途や、微弱な信号をみたい方、200Vを超える高電圧を見る予定のある方には、スタンドアロン型がおすすめです。
おすすめのオシロスコープ
USB接続型
Kuman 205A
Kumanの安価なPC接続オシロスコープです。
Win10のみ、英語説明書のみと、使いこなすにはある程度スキルが必要かもしれませんが、価格の安さが魅力です。
- 2ch
- 20MHz
- 48MS/S
- FFT付き
- Kuman
- Amazonで口コミ・レビューを見る
OWON VDS1022I
OWONのPC接続型 20 MHzオシロスコープ。
価格はそこまで安くなくていいから、もう少しまともなのが欲しいという方はこちらがおすすめです。
こちらはサンプリングレートが100 MHzであり、安価なスタンドアロン型と同レベルになります。
- 2 + 1 ch
- 20 MHz
- 100 MS/s
- 最大入力電圧400 V (PK-PK)
- プローブ付き
- FFT付き
- OWON
- Amazonで口コミ・レビューを見る
PicoScope 2204A
ピコスコープのPC接続型オシロスコープ。
PC接続型の定番ブランドで、操作性がよく、Web上で使用例もたくさん見つかります。
- 2 + 1 ch
- 10MHz
- 1ch時100 MS/s、2ch時50 MS/s
- 最大入力電圧 ±100V
- USBバスパワー
- FFT機能付き
- ファンクションジェネレータ・任意波形発生器付き
- Pico Technology
- 価格¥26,644(2024/11/23 08:25時点)
- Amazonで口コミ・レビューを見る
スタンドアロン型
OWON SDS1022
OWONのコストパフォーマンスの良い20 MHzオシロスコープ。
入門用に安価なスタンドアロンオシロをお探しならこれがおすすめです。
- 2ch
- 20 MHz
- 100MS/s
- 800×480ピクセルカラー7 inch LCD
- 最大入力400 V PK-PK
- FFT機能搭載
- 重さ1.5kg、厚さ約7cm
- プローブ付き
- OWON
- 価格¥22,000(2024/11/23 08:25時点)
- Amazonで口コミ・レビューを見る
OWON SDS5032E
OWONの30 MHzオシロスコープ。
上のOWONのオシロと比べ、帯域が30 MHzに増え、外部入力用チャンネルがあり、画面がやや大きいなど、一回り高性能になっています。
またメニューボタンが増えて、操作性も増しています。
使い勝手の良い小型のオシロを探している方におすすめ。売れ筋です。
- 2 + 1 ch(外部)
- 30 MHz
- 500MS/s
- 800×600ピクセルカラー約8インチLCD
- 最大入力400 V PK-PK
- FFT機能搭載
- 重さ1.5kg、厚さ約7.8cm
- プローブ付き
こちらの記事で使い方を紹介していますので、参考にしてみてください。
OWONのデジタルオシロスコープSDS5032Eの基本的な使い方。
- OWON
- Amazonで口コミ・レビューを見る
Tektronix TBS1052B
安心なテクトロブランドの50 MHzオシロ。
テクトロの中では最安のクラスですが、OWONと比べると高くなります。
ややサイズが大きくても、一定以上の信頼性が欲しいという方は、このクラスがおすすめです。
- 2 + 1 ch
- 50 MHz
- 1.0 GS/s
- 800×480 7型WVGA 高解像度ディスプレイ
- 重さ2 kg、厚さ12.4cm
- FFT機能搭載
- プローブ付き
- テクトロニクス
- Amazonで口コミ・レビューを見る
番外: キット
オシロスコープのキットも売られています。実用ではなく、遊び用としていかがでしょうか。
まとめ
USB接続型は手軽に使え、波形データの共有が容易な一方で、高速な信号や、微弱な信号、高電圧の信号など専門性の高い測定には向いていません。
データの利用しやすさを優先するならUSB接続型が、測定性能を優先するならスタンドアロン型がおすすめです。
以上、購入前に知っておきたいUSB接続・PC接続型デジタルオシロスコープの利点と欠点。スタンドアロン型との違いは。でした。