「トコトンやさしい熱力学の本」は熱力学を知りたい一般の方におすすめの本。

熱力学をこれから学ぼうという方は、どの本を読めばよいのかわかりにくいですよね。

今回は熱力学入門者向けの本、『トコトンやさしい熱力学の本』久保田 浪之介著のレビューをします。

参考書選びの参考にしてみてくださいね。

 

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本の概要

タイトル: トコトンやさしい熱力学の本(B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ)
著者: 久保田 浪之介
ページ数: 159ページ
出版社: 日刊工業新聞社
ISBN-13: 978-4526065118
発売日: 2010/9/10

 

「トコトンやさしい熱力学の本」は、日刊工業新聞社の「今日からモノ知りシリーズ」のなかの一冊です。

シリーズの他のタイトルには、流体力学、材料力学、燃焼学がラインナップされており、基礎物理というよりは応用工学寄りのシリーズだということが伺えます。

本の構成

そのシリーズの1冊ということもあり、この本がカバーする範囲は、「熱と温度」という熱力学の基礎の部分から、「流れのある熱力学」や「熱の伝わり方」という熱力学の応用の内容まで多岐に渡っています。

ページ数は159ページしかないので、さらさらと読むことが出来ます。

 

この本を開いてまず気がつくのは、縦書きの本だということです。

大学の熱力学の教科書に使われるような風格が漂うような雰囲気ではなく、ブルーバックスのような一般の方が気軽に読める雰囲気の本です。

見開きで1テーマが完結するように書かれており、ページ右側が文章で、左側がイラストという構成になっています。

この本の良い点

この本を読んでみて感じた良い部分を紹介します。

この本は、熱力学の用語や概念の物理的な意味を理解するのに役立つ本だと思います。

説明に使用される数式の量は、縦書きの本だけあって他の熱力学の教科書に比べて少なくなっており、文章によって現象の本質を平易に解説しようという努力がなされています。

 

数式ばかりが書かれている本では、数式を追えるようにはなりますが、その数式が意味する物理現象を想像することができないということがときどき起こります。

そういうときにこの本を読むことで、数式の意味を噛み砕くことができるでしょう。

 

本の後半では、物理寄りの熱力学の本では見かけることがない「ラバールノズルの超音速流れ」というテーマについても触れられています。

本の著者の経歴を見ると、著者は航空宇宙学で学位を取得しており、防衛庁技術研究本部第3研究所(現航空装備研究所)の所長をされていたということです。

そのため、本の後半は著者の専門分野であり、著者の本領が発揮されていると思いますが、このような流れのある熱力学について平易に書かれている本は珍しく、この本の特長ということができるでしょう。

この本に不足している点

この本で不足している点もあげてみます。

この本は「熱とエネルギー」、「エントロピー」などの一つのテーマについて見開きページで紹介するというスタイルのため、難解なテーマでは説明が不足していると思われる部分もあります。

「トコトンやさしい」というタイトルではありますが、初めて熱力学を勉強するという方が読んでも、使える知識として熱力学を身につけるのは難しいと思います。

 

しかし、一般の方が短い時間で熱力学とはどんなものか大雑把に知りたいという場合には向いている本でしょう。

もし使える知識として熱力学を勉強したい場合は、この本の前に他の基礎的な熱力学の教科書で勉強してから、よく理解できない概念に関してこの本を参照するとよいと思います。

まとめ

「トコトンやさしい熱力学の本」  を紹介いたしました。

この本は、熱力学の基礎から応用までカバーしている縦書きの短い本で、熱力学を広く浅く知るのに向いている本です。

熱力学を知らない一般の方がざっと読むのも良いですし、熱力学を他の本で勉強したものの現象のイメージがいまいちつかめないという方が読むのもおすすめです。

 

トコトンやさしい熱力学の本 (B&Tブックス―今日からモノ知りシリーズ)

以上、「トコトンやさしい熱力学の本」のレビュー。でした。